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Vol.84 「人」を救うのは「人」

 今回は「医療現場」をテーマに書きたいと思います。

 私たちにとって病院や医師・看護師は身近な存在であるとともに、
 実は、限りなく遠い存在なのではないかと思っています。
 それは、病気や怪我した時、以外には接することがないからです。
 言い換えれば、できるだけ「接したくない」存在なのではないでしょうか。

 しかし、人間という“生物”である以上、ごく一部の例外を除き、必ず接し
 なければいけない存在であることも、また事実です。

 最近、私自身、風邪をひいた時、病院でこんな体験をしました。
 具合が悪いのに、長時間待たされ、ようやく診察室に入れてからの出来事で
 す。

 医師は受付で測った熱を見て、喉を見て、胸に聴診器を当てて一言「風邪で
 すね」。
 そして「安静にしてあったかい物を食べて、ゆっくり休んでください…」
 はい次、とは言いませんでしたが、そんな素振りでした。
 終わったようなので、「ありがとうございました」と言って席を立ちました
 けどね。 

 私は、「具合はどうですか」とか、「何か最近ありましたか」といったよう
 に、まずは患者の話を聞くことから治療というものは始まるのだと思うので
 すが、まったく話を聞かず…というより、聞く姿勢すらなかったんです。 

 医師の免許を持って仕事をしている方ですから、相手は「プロ」です。
 知識も技術も経験もあるでしょう。
 患者さんがたくさん来ていましたから、腕も評判もいいのだと思います。 
 言っていることも正しいのでしょうし、不快な言い方だったとは言いません。
 でも、あまりに“事務的”というか“機械的”というか…。 

 医師は病や怪我を「治す」ことを生業としています。
 しかし「治療」する医学だけでなく、「予防」する医学もあるのですから、
 もう少し精神的なケアの部分も大事にして欲しいと思うのです。
 病気のことだけを(机上で)勉強してきた医師にはかかりたくないと思わさ
 れました。

 もちろん、そういう医師ばかりではないとは思いますし、もっと情熱を持っ
 て取り組んでいる医師もたくさんいることも事実です。

 そうなんです。「モラルのない医師」は困りものですが、 それ以上に、
 「頑張っている医師」への配慮の無さが心配になります。 

 教育現場と同様、何か問題があると、マスコミはことさら大きく取り上げま
 すが、その裏にどんな問題が潜んでいるのか、までは検証しないことが多い
 ようです。

 こんな記事がマスコミで報道されたことを覚えているでしょうか? 

 ある地方で、救急患者が受け入れを拒否され、死亡するという事件が起きま
 した。 
 マスコミはそのことを問題視。大きく取り上げた結果、病院及び当直医師へ
 の批判が高まりました。 
 しかし、当日勤務していた医師(2名)は丸24時間以上不眠で勤務し続けたう
 え、 1人は8時間に及ぶ大手術を終えたばかりの状態、もう1人は急な出産で
 手が離せない状況だったんです。
 しかし、マスコミはそういった情報を一切載せていません。

 当然、その病院には抗議の電話が殺到。 当直医2名は処分されることはなか
 ったものの、 責任を感じてか「精神の病」にかかってしまい、その後勤務
 に就けずにいるそうです。 
 これではただでさえ医師不足の中、さらに別の医師の負担が増すばかり。悪
 循環です。 

 また、別の産婦人科医のケースでは、こんな話があります。

 “医療ミスじゃないのか”
 “後で訴えるからね” 

 朝8時から毎日深夜までという勤務体系に加え月6回の宿直。
 いつ産まれるかわからないから、休日でも急な呼び出しに対応せざるを得ま
 せん。
 しかし、こういった苛酷な労働環境がクローズアップされることは少ないう
 え、どんなに頑張っても患者から感謝されるどころか、叱責を受けるばかり。
 リスクの高い高齢初産が増加したため、不安が増したのはわかりますが、特
 にここ数年、心無い言葉を吐かれることが増えたといいます。

 「体力的にきついだけなら、まだ頑張れる。それは覚悟の上。
 しかし、今は患者と心の触れ合いを持ち難い環境になったのが一番堪える…」
 そう話す医師は多く、医療の現場全体のモチベーションを下げています。

 いつの時代にあっても、“コミュニケーション”こそが、人を救うのです。
 福祉の仕事を目指す皆さんは、是非、そのことを忘れないで欲しいと思います。

 「人」を救うのは「人」しかいないんですから。

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