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Vol.78 君は脳性マヒブラザーズを知っているか?


 福祉メルマガらしい話題を一つ。取材で「こわれ者の祭典」という団体の人た
 ちの舞台を見るため、新潟へ行ってきた。
 「こわれ者」については雑誌で書くので説明はちょっとだけにする。精神障害
 や身体障害を持った人たち(だから「こわれ者」)のパフォーマンス集団だ。
 その中に、「脳性マヒブラザーズ」はいた。ストレートすぎる名前からすぐ分
 かるように、脳性マヒに子供の頃にかかった30代の男性2人のコンビである。
 2人の脳性マヒは種類が違うとのことで、ぼけ役(Daigoくんという)は立って
 いて、つっこみ役(周作くん)は車椅子に乗っている。つっこみの周作くんは、
 にこにこと優しい声で、滑らかに話す。ぼけのDaigoくんはひょこひょこと歩
 き、発話に障害がある。
 「脳性マヒブラザーズ版、桃太郎です」とつっこみ役の周作くんが舞台で言う
 のを聞いて、内心、私は思った。「桃太郎」?牧歌的。いかにも「福祉」を看
 板に掲げた、子供の学芸会レベルの芸なんじゃないのと。
 これが、面白かったのだ。 気が付けば、手を握りしめて、前のめりになって
 いた。

 テレビでよく見る、何回繰り返せば気が済むのか的な一発ギャグや、早口で分
 かる人にしか分からない楽屋ネタが横行する、独りよがりな芸風のお笑いには、
 私は、さしておもしろみも感じない。今売れている人たちの舞台は10年前に随分、
 観てきたが、本当に面白い、と思ったのは、吉本のドンドコドンだけだった。
 (その後「ぐっさん」がテレビに多々出始めた時には、激しく納得した)

 「脳性マヒブラザーズ」がなぜ、面白く感じたのか、あとで考えてみた。
 一つには、楽屋ネタがまったくないこと。なんせ素材が日本で最も有名な昔話、
 「桃太郎」なので、楽屋の設定のしようがない。
 同時に、分かりやすい。Daigoくんは発話が健常者のように滑らかではないので、
 ゆっくりと、はっきり伝えようと大きな声で話す。必然的に、話の流れは、
 ゆっくりになる。体のうごきも、一つ一つがゆっくりで大きい。脳性マヒとい
 う体の特徴を、逆手にとれば舞台芸にはぴったり、という見本になるのだ。
 つっこみの周作くんは、このコンビ以外にナレーションの仕事もこなす「語り
 のプロ」。つっこみつつ、ぼけの言うことなすことの解説をしつつ、どんどん
 場面を進めていく。
 彼らの手によって、「桃太郎」は煙草を吸う不良で、おじいさん、おばあさん
 を「ジジイ、ババア」と呼び捨てにして、でも女好きだから鬼退治にいけば女
 の子にもてる、とそそのかされて出かけていく、という、くすりと可笑しい物
 語に仕上がっていた。

 終了後、話を聞いた。この「脳性マヒブラザーズ」は結成2年、まだネタは
 「桃太郎」しかない。「夕焼けニャンニャン」にでていたプロのお笑い芸人に、
 稽古をつけてもらっている、という。
 面白い。これはぜひ「福祉メルマガ」で私が紹介しよう−−。
 と思ったら、なんのことはない。もう「脳性マヒブラザーズ」は知る人ぞ知る
 全国ネームで、「ニュース23」にも登場したことがある、とか。

 東京でも公演はある。12月にも新宿でやる。福祉学生なら、「脳性マヒブラ
 ザーズ」は必見だ。(詳細は「こわれ者の祭典」
 公式サイトhttp://koware.moo.jp/

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