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作業着を着た介護士の人たちの姿の後に、「介護制度に、あなたの声をくださ
い」との文字。老人ホームの会社によるあのCMは、私の中では「広告大賞」
を授与したいくらい、うまいと思う。あのCMを見るたびに、福祉メルマガの
読者の方々のことを思う。若い学生さんたちが、どんな気持ちで介護を自分の
仕事に選ぶのだろうかと。
日本はおそらく、これまで以上に、福祉国家ではなくなっていくだろう。世界
の政治の流れを見れば、日本も、イギリス型、アメリカ型の小さな政府志向に
なびかざるをえないと情勢らしい。小さな政府志向の政策では、いうまでもな
く、福祉や医療は削減の対象となる。なるべく多くのことを民間、つまり市場
に委ねよう、政府の関与は極力減らそう、とするのが小さな政府だから。
そういった志向をとることを「新自由主義(ネオリベラリズム)」という。
発端は、80年前後の英国や米国だ。
英国出身の経済学者、デヴィッド・ハーベイの「新自由主義」は、次のように
説明する。
戦後、イギリスは「ゆりかごから墓場まで」と掲げるほど社会保障政策が充実
した福祉国家だった。けれども、その結果、財政赤字がふくらみ、国際競争力
を失って、凋落した国になってしまった。
そこで1979年に登場した鉄の女、マーガレット・サッチャー首相が、国の力を
取り戻すべく、脱・福祉国家を目指した。炭鉱をはじめ、いろんな分野を民営
化した。アメリカでは、レーガン大統領が登場して、企業への減税を行い、金
持ちの所得税率を70%から28%まで下げた。かたや労働者や労働組合を攻撃し
た。
大企業や金持ちは栄え、労働者は困窮する。これぞ格差社会だ。
いま、日本で問題になっている格差化の進行は、米英では80年代から着々と、
政策から生み出された必然の帰結だった。で、米英はいま好景気を享受している。
日本はどうか。上記ハーベイの本によれば、政治的にみれば、郵政民営化を断
行した小泉政権が、ようやく登場した、明らかに「新自由主義」を掲げる政権だ。
が、実は「構造改革」を掲げた橋本内閣、いやもっといえばレーガンの盟友、
国鉄民営化を実現した中曽根内閣から、小さな政府志向の政策は始まっていた。
ずっと、自民党政治とは「農村部への利益誘導型」の政治だったから、あから
さまに、企業・金持ち優遇、貧困層切り捨て、の構造が見えてこなかっただけ。
いわれてみれば、農産物の市場開放も、金融の自由化も、これから始まる労働
市場の自由化も、困るのは、農民や中小企業経営者や、派遣労働者など、立場
の弱い人たち。
福祉の面で考えれば、もともと「ゆりかごから墓場まで」の福祉なんて充実し
ていなかった日本は、さらに、より一層の非福祉国家になっていくのか。
そうだろう。その動きは始まっている。その一例が、国が福祉を背負うのでな
く、受ける人たちの払ったお金で、その範囲内でのサービスを受けてください
ねというのが、介護保険制度である。
介護保険制度の導入で、ケアマネージャーにいいプランを立ててもらって、便
利になった人もいれば、逆に不便になった人もいるだろう。
でもそれは市場のなすこと。国のせいではありません。政府は小さいのだから、
それを選んだのは国民なのだから仕方ない、ということだ。
けれどもそれでは国民は、不幸になる。ではイギリスやアメリカの市民は悲惨
なの?
いや、そうとは限らない。危機感は、また新しい知恵を生む。
「社会起業家」の台頭はその一つの側面なのだ。介護の現場をもこれから変え
ていくであろう、社会起業家の台頭については、また次回に。
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