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Vol.67 セクシー社員の跋扈する会社


 この会社、なんか色気が漂ってる!

 受付に到着した途端、一般の企業とは異質な雰囲気を醸し出す会社を、
 取材で訪れた。
 まず受付に座っていた女性のメイク。109のショップ店員みたいなのだ。
 どういうことかといえば、いわゆる「デカ目メイク」つまり、アイラインや
 マスカラでくっきり目の周りを強調したお化粧をしている。
 浜崎あゆみが筆頭、といえば、分かりやすいだろう。
(福祉メルマガの読者のみなさんは、若者だから、こんな例えはいらないかな)

 「社長の取材で参りました」と用件と名前を彼女に告げると、「ではこちら
 でお待ち下さい」と彼女が立ち上がった、その時。
 スカート短い!それに細い足を強調するような、ハイヒール。
 8センチ、いや10センチあるかも。
 受付嬢だからかな、と思ったが、実はその方は、たまたま受付に座っていた
 だけ。社内を案内されると、さらに驚きの光景が待っていた。

 女性、全員、スカート短い!足の細い人も、そうでない人も。
 で、柄タイツなどを履いている。足下はもちろんハイヒール。
 上下ともグレーのスーツなのに、揃いも揃って、デカ目メイクと美脚強調フ
 ァッションである。

 グレーのスーツに、おっさんが履くようなデカ靴を履いていた私は、記者と
 してというより、オンナとして、「すみません・・・」と言いたくなるよう
 な、なんとも肩身の狭い気持ちになった。
 企業の取材先でこんな思いをすることになるとは、思いも寄らなかった。

 さてこの会社は、在日日系ブラジル人社長が起業したベンチャー企業である。
 私より7つも若い青年社長(といっていいかな)が、私が社会人になったそ
 の年、1990年に工場労働者として来日し、たたき上げで作り上げた、いまや
 そうそうたる会社である。
 だって売上高100億円、従業員500人、関連会社23社、大きな総合スーパー
 のほか、食品工場やフィットネスジム、レストランを運営するといえば、
 ちょっとしたヒルズ族も(古いか)びっくりの、一大企業グループではない
 か。
 在日日系ブラジル人、といえば、昨今は週刊誌で「逃げ得大国ニッポン」な
 どと、犯罪人引き渡し条約のない国から来た外国人問題の筆頭として、話題
 に挙げられることばかりが目立つ。
 
 この会社の社長、玉田正利さんも、日系ブラジル人の来日ブームが始まって
 すぐに、日本へやってきて、家族に仕送りをしながら猛烈に働く、多くの日
 系ブラジル人の一人だった。
 玉田さんが「その他大勢」と違ったのは、比較的豊かな層の出身者が多いと
 いわれる日系ブラジル人社会の中では珍しく、スラム育ちで、13歳の時から
 家族を養うべく、マフィアにまぎれて魚市場で働いていたという、否応なし
 に身についた「ど根性」に、あったのだと思う。
 が、それは話をじっくり聞いて、分かったことである。
 玉田さんその人は、いつもニコニコ、陽気で話し好きで、私たちと同じく純
 粋日本人の血を引く人とはちょっと思えないほど、ラテンの風そのまんまな
 感じの人なのだ。
 「女性、色っぽいですねえ」と社員の服装について聞いてみると、「え?そ
 うですか」と逆にびっくりしていた。特に意識したことはなかったですねえ、
 と。

 日本にありながら、ラテン気質な会社。社員は元気に楽しく働いていそうだ
 なあ、と想像したが、その日、スーパーを案内してくれた日本人の社員も店
 長も、パワー溢れる、という雰囲気をむんむんと醸し出していた。
 玉田さんの運営するスーパーは、日本の電鉄系スーパーが撤退した跡地に、
 出店した。近辺の人口構成に合わせて、ブラジル人向け食材3割、日本の食
 材7割くらいの割合で、見たこともないほどの赤さの牛肉のそばに「ブタニ
 ク日本」と書かれた日本人向け豚肉が並んでいたりする。

 昔ながらの日本人住民には、「前のスーパーは日本人向けだったから、よか
 った」との声もあるが、それで潰れてしまったのだから、スーパーを存続さ
 せるにはマーケットに合わせて「混合スーパー」を受け入れるしか、ない。

 グローバル化は、局地的に、でも着実に、日本でも進んでいるのだと実感し
 た取材ツアーだった。

 あのセクシー女性社員の出で立ちを目の当たりにすると、私も仕事用のハイ
 ヒール、一足買っておこう、と「セクシー記者」への意を新たにしたのだっ
 た。(たぶん、足痛いとかいって、お蔵入りすると思うけど)




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