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Vol.54 自分で自分を祝いましょう!
  「私も40歳、自作自演の誕生パーティーをします」
 こんな招待状が、わが女ともだちからメールでやってきた。

 私、結婚式もしていないし、いつできるか分からないし、40歳の誕生日くら
 い祝ってもらってもいいかなって、と彼女が言うのは聞いていたけれど、ま
 さか、本当に「自作自演の誕生パーティー」??
 たしかに、この年になるとお母さんが準備してくれる訳でもナシ、「私が主
 役」のパーティーって、披露宴かなにかの受賞パーティーか、お葬式じゃ本
 人不在だし、思いつかないよなあ。

 聞いたことのないその試みは、行ってみると、実にいいパーティーだった。
 司会は本人、乾杯の前に飄々と「40歳になるにあたっての決意表明」をし、
 私を含む何人かが彼女の人となりについてスピーチをし。参加者はだれもが、
 40歳という大台にのる自分を自分で祝っちゃおうとする彼女に、暖かい笑顔
 を向けていた。
 そして何人かは、「これマジ楽しい。おれも来年、やろうかな」なんて言っ
 て帰っていった。

 福祉を学ぶ学生さんの多くは10代なのだろう。そしていずれ20代に突入する。
 すでに働いているみなさんも、20代の人は30代に、そして30代の人は40代に。
 新しい10年へ足を踏み入れるということは、とてつもなく大きな人生の階段
 をまた一歩、否が応でも上らざるを得ないということで、憂鬱だ。過ぎた10
 年を思えば、あっという間なのだから、これから来る10年もきっとすぐに過
 ぎてしまうのだろう。
 このように想像すれば、自分の命という時間の長さにまで思いが及び、怖く
 なる。
 そこで「祝っちゃおう」という発想ができる彼女の姿に、招かれた人はそれ
 ぞれに、静かに胸を打たれたのだった。

 さて「祝っちゃおう」でいえば、日本ハムの新庄剛志選手、34歳である。
 ことし4月18日、今期第2号ホームランを打ったその日、試合の最中に、
 「28年間思う存分野球を楽しんだぜ。今年でユニホームを脱ぎます打法」と
 自らのホームラン名を広報経由で発表、これこそ前代未聞、残り140試合近く
 を残して「引退宣言」をしてしまったのだ。
 通常、選手が引退するときは、もうレギュラーではなく控えに甘んじている
 場合が多い。
 引退はチームの順位も決まった9月末か10月に球団が静かに発表、引退試合は
 10月、最終戦に「代打」として登場、ピッチャーなら1人を相手に投げて三振、
 本人もファンも、涙、涙というパターンのものである。
 新庄は、残り100の引退試合(故障も多いし、彼の長いファンはだれも残り
 140試合に出られるとは思っていない)をする、球史に残る男となった。
 そんなにあればいちいち泣くわけでもなし、ファンは「辞めないでー」と声
 援を送るため、今期も球場に足を運んだ。(新庄は25歳の時、いちど引退宣
 言をしてすぐ撤回した過去の持ち主なのだ)

 選手は、人に見られてこそ強くなる。人気球団が強くなるのは、理なのであ
 る。周知の通り、日本ハムは25年ぶりにパリーグを制覇。日本シリーズに挑
 むこととなった。
 新庄は100の引退試合の効果をどこまで意図したのか、分からないけれども、
 結果として新庄の引退試合は野球人として最高の舞台となった。
 日本シリーズ含めて今期の日本ハムがもたらした北海道での経済効果は推定
 220億円(北海道未来総合研究所の試算)。
 引退試合は日本ハム優勝試合の涙と重なるのか、あと一歩と唇をかむことに
 なるのか。
 どちらにしても、新庄の引退試合は、ファンの歓喜と感謝の涙にあふれたも
 のになるだろう。

 自作自演、すばらしいじゃない。その精神で色々乗り越えて行きたいものだ
 と、私も思う。

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