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Vol.41 「女友だちの賞味期限」について

 福祉メルマガ読者の年代の皆さんにはまだ実感はないかもしれませんが、40
 歳を前にした筆者くらいの年齢になると、友人数人があつまればその属性も
 様々なものです。離婚経験者あり、離婚寸前で泥沼化中の者あり、はたまた
 独身の者あり。
 で、最近は頻繁に、こんな話題が飛び出します。
 「最後に頼れるのは、女友達だよね」
 「男はあてにならない」
 「そうそう、一緒にグループホームに入ろうよ」
 たぶん私は認知症にはならないと思うので、グループホームはいかないだろ
 うと想像するのですが、はて、そこで別のことを考えます。

 グループホームってどのくらい財産があれば入れるのだろう。大企業に勤め
 ている彼女達は、生涯独身でも多少の蓄えはつくれるだろう。でも物書きじゃ、
 グループホームに入れるだけのお金が用意できるだろうか、と。
 つまり女友達で老後を助け合おうねと約束したとしても、その約束を実行す
 るためには一定の経済力が必要となる。

 じゃあ、友情も経済力次第ってわけ?

 そんなことを考えている時、人から勧められたのが「女友だちの賞味期限」
 (プレジデント社刊)という本でした。アメリカの女流作家たちが、失って
 しまった女友達とのエピソードを記している実話集です。
 三角関係。元ルームメート。近寄りすぎた関係。様々な友情破綻の物語の一
 話に、やはりあったあった。経済問題を機に絶縁した2人の話です。
 筆者は、両親の豊かな財政援助によって、娘を私立の学校へ通わせていた物
 書きの女性。その両親の経済破綻で娘の学費が払えなくなった彼女は、かつ
 ての自分と同じくらい裕福であるはずの親友に、大切にしていたルノアール
 の絵を買ってくれないかと、おずおずと持ちかけます。
 「絵は買うわ。それに娘の学費の不足分は私たちが援助するから、心配しない
 で」
 親友の寛大な申し出に、彼女は頭を下げました。
 まもなく親友は、絵の代金を支払ってくれました。そして学費の支払い時期
 がやってきて、彼女は親友に、どのくらいまで援助してもらえるか、訪ねま
 した。
 「絵は購入するといったけど…」
 学費援助なんて言ったつもりはない。こう親友は言うのです。そんな食い違
 いがありうるのだろうか。それを機に、2人は2度と連絡をとらなくなった。

 金の貸し借りは友情を壊す元、とは言いますが、ここでの問題は2人に生じた
 経済格差です。
 同じレベルの暮らしをしていた時には培えた友情が、格差の発生によって壊
 れてしまう。
 悲しいけれどそれが人の世の現実であるのは、実感として分かります。
 久しぶりに友人と食事をする時、相手の着ているもの、指定する店にハッと
 する体験は、ある年齢になれば皆にあるはずです。
 こんな高い店で平気で食事してるの? いつもこんなチェーン店でしか食べ
 てないのかな? カルティエの時計なんてよく買えるな。あるいは、そんな
 にくたびれたカバン、なんで使うんだろう。
 類は友を呼ぶの「類」とは、人格や属性のみならず、経済力も含むのでしょ
 う。

 私は人間を題材にモノを書く人間なので、相手の経済力が自分とかけ離れて
 いればそれも一種の情報として、知らない世界をちょっと覗かせてもらうく
 らいの気持ちで楽しみたいと思っています。
 でも仮に失恋した直後の親友に、夏に一緒に海外へバカンスへ行こうと誘わ
 れても、それは私の現実生活の中では、無理なこと。
 となるとその親友は、私のためにはお金を使ってくれないのねと、失望する
 かもしれません。

 知らない世界を覗かせてもらうにも、経済格差があれば不可能な事態だって
 ありえます。

 そんなこんなを思い巡らすと、「女友だちの賞味期限」の重要な要素には、
 「お金の問題」が絡んでくるじゃないかと、世知辛い気持ちになってくるの
 です。

 福祉の世界を知る読者の皆さん、現在の女たちの老後を覗いてみて、そのあ
 たりいかがでしょうか。


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