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Vol.37 株投資ブームですが最大の投資は自己投資

 ライブドア・ショックもなんのその、株投資が全国民的ブームの様相を呈し
 ています。
 福祉メルマガの読者諸兄は若い世代が多いと聞いていますが、株に興味があ
 りますか?
 株への関心が高まるのは、巷にはびこる成功談のせいです。
 2005年の個人投資家の売買代金は約250兆円、1年で100兆円以上も増えました。
 そのうちインターネット経由の取引は、実に8割です。
 そして、アンケートによると、ネット株取引経験者のうち54%の人が、05年
 の運用成績は「黒字だった」と答えているのです。
 (インフォプラントと日経産業新聞)
 儲かった、と聞くとじゃあ自分も、と思うのが人の常です。
 それに株投資のイロハを書いた本をちょっと読めば、日本経済の大景況につ
 いて、まもなくデフレを脱却する、そして将来はインフレ懸念がある。
 だから底値圏にある今こそ株を持つ好機、と決まって書いてあるのです。
 「株で儲けるサラリーマンの1週間−『1年で給料の3倍』はなぜ可能か」
 とか、「株で3,000万円儲けた私の方法」なんて本ばかり読んでいると、
 サラリーマンや主婦にできるなら私だって、と欲望をチクチク刺激する体験
 談が満載です。
 仕事の要請で株について調べているうちに、私もすっかりその気になってし
 まいました。
 だって原稿料収入なんて、考えうる限り、もっともインフレに弱い類のもの
 ですから。
 この業界に長い人からは、「原稿料の相場は80年代前半から変わっていない」
 としばしば聞かされます。
 今から20年前に雑誌の創刊ブームが沸き起こりました。
 雑誌の創刊は、週刊誌なら昭和34年、皇太子ご成婚にあわせてと周期があり
 ますが、今ある雑誌の原型は80年代前半にはおおむね出そろいました。
 そのころは、書き手より媒体の数が多く、カメラマンやライターがとにかく
 求められ、少々原稿が書ければ、出版社の社員よりいい収入を得られたのだ
 といいます。
 しかしその後、活字離れが進むと雑誌は淘汰の時代を迎えます。
 1ページ2万円、などと決められた相場は変わることなく、バブル崩壊後の
 冬の時代を通過しました。
 いまやライターやカメラマンといえば、”下流社会”の住人の筆頭にあげら
 れそうな職業の代表です。
 四十路手前の同世代、独身同業者2人に「株、どう思う?」と聞くと、「や
 りたいと思っている」と異口同音の答えがかえってきました。
 原稿料でずっと生活していけるか不安だから、と2人ともが言いました。
 
 福祉業界も、仕事や就業の形態によるかとも思いますが、概して高賃金業界
 ではないと聞きます。
 生活防衛のため、年金が崩壊する将来のため、株やるぞ、と思っている若人
 もきっと、少なくないでしょう。
 しかし、マネー本から目を離すと、少し冷静になれるわけです。
 
 バブル末期に証券会社に乗せられて投資をしたり、銀行ローンを組んだ人が
 大損を被り、人生設計をめちゃくちゃにされた記憶はどこへいったのでしょ
 うか。
 証券会社や銀行の言うことは信じちゃいかん、というのがバブル崩壊の教訓
 じゃなかったのか。
 株だ投信だと金融機関が謳う今、同じようにブームに乗って、やれネット株
 だ携帯トレードだと投資の世界に足を突っ込んで、あの時の二の舞になりは
 しないのか。
 
 金融コンサルタントの木村剛さんは、毀誉褒貶ある人ですが、なかなかいい
 事を言っています。
 仕事で超一流になれば、おのずと個人投資家としてもプロになれるのだ、と。
 まずは仕事に全力を注げ。会社内でぶっちぎりの高給取りを目指せ。
 本を読み、人に会い、情報処理能力を身に着けろ。
 株の本やマネー記事を読むのは、時間の無駄である。
 仕事をきっちりして、自分の見方のベースができれば、多くの人とのコミュ
 ニケーションができるようになる。
 独自の情報網が形成されれば、マスコミ報道やうわさに惑わされない、自分
 のスタンスがとれるようになる。
 だから自己投資こそが、重要なのだ。
 こう木村氏は、著書の中で述べます。
 
 抽象的な物言いですが、考えてみれば、もっともです。
 だって私の人生において、重要なのは、この1年、株に振り回されて年収の
 1割を株で稼ぐことよりも、今後20年にわたっていい原稿料をもらい続けら
 れる書き手であることの方が、よっぽど「稼げる」わけなのです。
 福祉の仕事のみなさんだって、同じことでしょう。
 「高くてもいいからあの人のサービスを受けたい」と顧客から願われるサー
 ビス提供者になるには、今、この若い時間を仕事に集中することこそ、必要
 なのです。
 そう考えれば、「今が底値だ」といったマネー記事に振り回されるのはナン
 センスだと分かり、なにより心の平穏が得られます。
 プロになろうじゃありませんか。我が道で。


     

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