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Vol.34 仕事のルーツ

みなさんは、雑誌をふだん買いますか ?買うならどんなものを?

私がよく買うのは、週刊誌です。電車のつり広告、新聞に載る思わせぶりな
見出しに、つい、手が伸びてしまう。
そしてあれこれ考えます。ライターという職業柄、匿名の記事とはいえ、書
き手はいわば同業者。
これはどういう人が取材したのだろうか。
ライターが出したテーマなのか、編集部に頼まれて動いたのか。
どことはなく、同業者の仕事ぶりを見る場でもあるようで、週刊誌はいった
ん手に取ると、一冊を隅から隅まで読みつくします。

このように自分にとって馴染み深い存在である週刊誌、なのですが、じゃあ
週刊誌っていつごろ、どんな形で誕生したのか、などのルーツについては
まるで知りませんでした。
そして先日、調べもののついでで、そのルーツに触れて驚いたのでした。

週刊誌は当初、朝日新聞や毎日、読売新聞の出す新聞社系が先行しました。
サンデー毎日と週刊朝日の誕生が、大正11年。
そうして出版社の出す週刊誌の多くが、ミッチー・ブームに乗じて登場して
いたとは。
福祉の仕事メルマガ読者のみなさんは、ミッチーと聞いても「皇后陛下」と
連想はしないかも。
でも皇后陛下が民間人の正田美智子さんだったころ、お妃に決まったため世
の大衆の間に沸き起こったのが、「ミッチー・ブーム」でした。

皇太子結婚の1959年といえば、終戦からわずか14年後。
しかし結婚の宴やパレードを日本人はひと目みたいと望みました。
この年はテレビが爆発的に売れ、4月10日の結婚にあわせるかのように、
週刊誌が続々と発刊されたのです。
3月15日号に朝日ジャーナル、4月12日に週刊現代、20日に週刊文春、
5月14日に週刊平凡。
なんとこの年だけで20誌もの新・週刊誌が生まれました。
出版社系で先行したのは週刊新潮で、1956年の創刊。
報道よりの新聞社系にはない、斜に構えた、大衆の不満や鬱屈をくすぐるよ
うな記事で、成功しました。
そこに大手出版社は眼をつけ、ぜひわが社もいずれは、と考えた。
で、皇太子ご成婚という国民的イベントが好機とばかりに到来したのです。
ちなみに週刊現代の創刊号の表紙には「御成婚はこのように行われる」と
スッキリ一文が。
「朝6時半にヒロイン美智子さんは英三郎氏、冨美さんの両親に見送られて
品川区五反田池田山の正田家の玄関を出る。
お迎えの鈴木東宮大夫に導かれて、菊の御紋章を朝日にきらめかせたアズキ
色の車に乗り込む美智子さんは……」と、来るべき「その日」を見てきたか
のように詳細なレポートで先取りしています。

皇太子妃になってからも「ミッチー・ブーム」は週刊誌に脈づきます。
とくに女性週刊誌。「宇宙博を見に行った美智子様」「訪米前に事前勉強を
する美智子様」「御帰国後の美智子様」とまさに一挙手一投足を、毎週、つ
ぶさにグラビアで紹介するのです。
その量たるや、昨今の雅子様・愛子様報道の比なんかじゃないのです。

その後の週刊誌勃興期を支えたライターには、60年安保の活動家や演劇青年
だった人々が多く流れ込んできたと、週刊誌のライター(特派記者といいま
した)から作家に転進した長尾三郎氏の体験記「週刊誌血風録」(講談社文
庫)にありました。
著者いわく世の中の位置づけでは「吹きだまり」。
当然、猛烈な反体制意識をもち、取材活動におけるゲリラ戦も厭わない。
皇室の記事は仕事としてこなすけれど、政治や社会事件や芸能人のゴシップ
も、体を張って追う。
右肩上がりだった週刊誌は、編集部も気前がよく、講談社なら講談社の近く
にある旅館を借りて、そこに特派記者を集めた分室を設けていた、そこでは
寿司でもステーキでも食べ放題、みんな出版社が支払ってくれた。
また取材能力と執筆能力の両方を持ち合わせた人はそうはいない、と取材
データを集めてくるライターと、それを文章にまとめるアンカーマンという、
今もある分業体制を確立したのが、1958年創刊の「女性自身」の編集長の案
だった…。

さてこういったルーツを知ると、今まで読んでいた週刊誌が違って見えてき
ます。
なぜ最近のライターは元気がないと嘆かれるのか、なぜライターの原稿料は
上がらないのか、そもそも、なぜこれほど皇室報道が週刊誌をにぎわせるの
か。
自分の今の仕事を振り返る上でも、ルーツはもっと早く知るべきだったと思
いました。

この話をするのは、福祉の仕事を目指すみなさんにとって、福祉が今はまだ、
過渡期にあるのではないかと思うからです。
介護保険はできたものの、運用はまだいくらでも変わりそうです。
団塊世代が定年退職を迎える2007年以降、真の意味での高齢化社会が日本を
襲います。その時、福祉の仕事はどう変わっていくのか。
不確定な要素が多いと、仕事に飛び込んでいく上での不安も募ります。
けれども、これほど勃興期にあるジャンルがほかにあるか、と考えることも
出来る。
やりようによっては、いかほども面白く働ける可能性の残された、数少ない
分野かもしれません。


     

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