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Vol.19 「100年に0.01人の命」を救うためあなたが年144円払えと言われたら?
今日は食の安全をテーマにさせて下さい。

「従業員の給料も減らして私の貯金もつぎ込んで。でもメニューの値上げはできないし…苦しいわ」と焼肉店のおやじさんはため息をつきました。

BSE(牛海綿状脳症)感染牛がはじめて日本で見つかったのは、2001年9月10日、あのNYテロ事件の前日でした。のちに米国でも感染牛が出て日本は輸入禁止措置をとった。それ以来、肉不足は深刻で「仕入れのたびに、問屋は『値上げのお知らせ』の紙切れ一枚を箱に入れてきますわ」

米国牛の輸入再開を望むのは、吉野屋や牛丼ファンだけじゃないんですね。

さて質問です。アメリカ人が平気で食べているものを日本はなんで危険視するの?「全頭検査してないもん。日本はしてるのに」。

正解です。じゃどうして米国は全頭検査しないの?

これは難しい。「カネを食うだけ、科学的に無意味」と彼らは言います。たしかに全頭を検査するのは世界で日本だけ。日本でもその必要性を、専門家委員会が議論しました。その結果、やっぱ全頭はやめよう、月齢20ヶ月以下の牛はパス、だって若い牛の感染は今の検査法では見つけにくいから、との結論が。

BSEが問題なのは、食べると致死性の病に人がかかるリスクがあるから。全頭検査は感染牛発見に威力がある。でもBSEは未解明な病気で全頭検査したってリスクはゼロじゃない。なら全頭検査で減らせるリスクってどんなもんなの?既出のデータから試算した人がいます。中西準子さんという環境の専門家です。結果は「死者数は100分の1に減る」。

すごいじゃん、全頭検査!

でもこれまで米国が出したデータをみる限り、脳など危険部位の除去を米国が完全にしていれば、全頭検査なしでも「日本人が米国牛を100年間食べ続けた時の患者は1人未満」なのです。全頭検査はさらに、それを「100年に0.01人」まで減らす。ソコマデスル必要ハナイ、と米国が譲らないわけであります。

それでも全頭検査は必要だ、との意見はある。全頭検査に年30億円かかるとしたって「牛肉100グラムあたり1円未満」、大した費用じゃないと。福岡伸一さんという分子生物学者の試算です。そもそも米国が今まで出しているデータはまるで不十分、BSEの構造そのものがよく分かっていない現段階でなぜ全頭検査を止める必要があるのか、きちんとBSEについて解明してからでも遅くない、とこの人は言います。

さて最後の質問です。上記お2人の専門家の試算を、乱暴ではありますが併せて使わせていただきましょう。

100グラム1円として週3日、1回100グラムの牛肉を食べるなら増える牛肉代は年間142円。あなたは年142円を払う気になれますか。それで救えるのは「100年に0.01人」かもしれないのに。いや、ペットボトル一本分で安心できるなら安いよ、と思いますか。

米国牛の輸入再開問題の根底にあるのは、安全や安心のためにあなたはいくら払う覚悟があるの、政治はどこまで安心と安全を両立させようとする意欲をもっているの、という価値観への問いなのです。こう考えると、福祉の問題とも通じるものがありますね。

     

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