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Vol.11 なぜか今、「日記」が流行中
「日記」が流行しています。
定年後のおじさんの自己回顧じゃなく、若い人に。
ウェブサイトの日記もさることながら、手書きの日記帳も売れているとか。

日本一の日記帳売り場をもつ銀座・伊東屋には、一冊5000円もする
「10年日記」から外国製のオシャレな日記帳まで、ありとあらゆる
種類の日記が揃っています。

若い人に人気なのは、手帳にも日記帳にもなるような
ノートタイプのもの。

「最近、若い人が電車の中でノートを取り出して、一生懸命
書き込んでいるのをよく見かけますよね」とお店の担当者。

若くはないけれど私も電車で書いてます。
時代遅れの大きなシステム手帳を持ち歩いているので、
その余白に、誰と電話したとか、何を読んだとかちょこまかと。

ただ私は職業上の必要に迫られてのこと。
世の「日記ブーム」の存在には気が付きませんでした。

けれどもいざ調べてみると、あるわあるわ、「日記の書き方」に
ついての本が相次いで出版されているのです。

「英語で日記を書いてみる」
「1日5分 奇跡を起こす4行日記」
「日記の魔力 この習慣が人生を劇的に変える」
「なりたい自分になれる 中山式『いいこと日記』をつけよう!」
「あなたの夢をかなえる『未来日記』」

このうちの1つ、「日記の魔力」の著者、表三郎氏に話を聞きました。
表氏は駿台予備校の英語の先生で、かれこれ30年間日記を
つけ続けています。

表氏によると、氏が日記を付け始めた30年ほど前と今は
「時代の流れの速さが似ている」とのこと。

1968年にピークを迎えた全共闘運動の時代には、
日記を付ける学生は多かったそうです。
なぜなら全共闘運動では、思想的分裂や、暴力事件も含めた
新たな動きが常に勃発していました。渦中にいる学生は、
とにかく記録をつけておかなければ大きな流れに
呑み込まれてしまう、という気持ちになったのだとか。

翻って現在も、グローバル化、IT化で変化の激しい時代です。

めまぐるしい流れの中で、「自分とは何か」をなんとかつかみたい。
日記ブームにはそんな欲求が働いているのでは―
というお話でした。

さて一連の「日記本」を眺めていると、どれもタイトルが
「自己啓発的」であることに気付きます。

まずは書くことで自分を客観的に見つめ直そう。
それにはネガティブな言葉を記してはいけない。
なりたい自分、こうありたい目標を書こう。
書けばその目標が意識化され、行動につながる―。

何かに似ている、と思いました。
認知行動療法だ、つまりセラピー的なのです。

たとえば「1日5分 奇蹟を起こす4行日記」は、
「事実」「気づき」「教訓」「宣言」の4行で
日記を構成する方法です。

表紙にはこんな例が記してあります。

成功者になる!「未来日記」のつくり方
「事実」−4行日記を毎日つけている。
「気づき」−なんだか自信がわいてきた。
「教訓」−自信があることはうまくいく。
「宣言」−私は、4行日記で成功をつかんでいる人間です。

読売新聞03年3月25日の「パニック障害に認知行動療法」
という記事にある、千葉大精神科ですすめている
パニック日記の書き方は次の通りです。

「出来事」−今日は坂を自転車で登った
「感情」−心臓がドキドキして不安
「自動思考(思い込み)」−怖い発作が起こる
「合理的反応」−坂道で心拍が高まっただけ
「結果」−心拍が普通になり不安が収まった

心の病の根本問題である、感じ方や考え方に特有のゆがみを
修正するためにつける日記は、「成功者になる」ための日記の
骨格ととても似ています。

日記を書くとは、自分の行動なり考えなりを、記述という作業を
通じて反芻する作業です。「成功者になる」ことを目指す日記が、
心の病から回復するための日記となぜ似てくるのか。

日記ブームとは、「自分を変えたい」という強い欲求の
表れだからでしょう。

さて福祉を学ぶみなさんの目には、この「日記ブーム」、
他人事に映るでしょうか。
     

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