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Vol.07 無料通話は悪魔の道具か
「スカイプ」って知ってますか? 
私が定期的に参加しているシンクタンクの会合で、メンバーの1人である
大学生の起業家クンが、得意げに言いました。
「最近、僕らの間では、スカイプ使ってる? っていうのが挨拶代わりに
なってますよ」
無料ソフトの名前なのだそうです。パソコンにダウンロードしてヘッドホン
付きマイクをつければ、タダでいくらでも相手と話ができる「無料電話」
なのだそうです。

インターネット電話とは違うものなの?
マイクロソフトのネットミーティングと同じじゃないの? 
音が悪いんじゃないの?
質問攻めにあった彼は、おじさん、おばさんはしょうがないなという風に、
少々うっとうしそうに言いました。
「とにかく使ってみれば、分かりますから」

早速私は周囲の友人に、「スカイプ知ってる?タダで電話できるらしいよ、
ダウンロードしてみてよ」、と言いまくりました。
何を隠そう、次回のこのメルマガにはスカイプを使ってみた体験を
書こうとひらめいたのです。
次の締め切りまでに、なんとしてもスカイプ仲間を作らなくちゃ。

せかして、せかして、ようやく「やってみたい」と言ってくれる
友人が現れました。さて、彼女と示し合わせて使ってみた所……。

いやあ、これはすごい。
音質は、電話よりクリアなぐらいです。少なくとも携帯電話よりは
よほど聞きやすい。回線の問題なのか、時々、プツっと音が途切れは
しましたが、ウチではIP電話だってブチブチ切れるのです。
無料ソフトならば許しましょう。

ところが問題は別の所に潜んでいました。
「ウチのお義母さんがさあ」
友人から、姑についての愚痴を聞かされること1時間。
まあタダだからいいかと、私は電話を切るタイミングをついつい
逸してしまいました。
家族の状況など深刻な悩みから生じたものであればあるほど、
愚痴は聞く方も疲れるもの。ようやく終わった。さあ仕事をしようと思ったら……。

「スカイプ、私も始める準備をしました。今ならできるよ」
と学生時代の同級生からメールが。
計ったような時間差攻撃。もう別の友人と試したのだからさっさと原稿を
書き出し所だったのですが、元はといえば私が誘った話です。
しょうがない、もう1人とも試してみるか。
「こないだの彼とは別れることにしたの」 
何いっ、そうなの?一体どうしたの? 
思わぬ人生の恋愛話を打ち明けられてしまいました。彼女は堰を切ったように
話しだします。うんうん、それで、と頷きながら、気が付いたらまた1時間、
人の悩みを聞き続けていました。まるで私はスカイプ人生相談係。
2人とのスカイプ通話を終えると、もうぐったり疲れてしまいました。

そしてあることに気が付きました。
いくら話しても無料となると、電話の会話の質も変わるんじゃないか、と。
これまでなら、そろそろ切りたいなあと思った時、たとえ相手がかけてきた
電話であっても「電話代もかかっちゃうからそろそろにしようか」等々、
それとなく、あなたにご負担ですからと持ち出して、会話を打ち切ることが
できました。
けれども無料となると、その手は使えない。
切りたいときは、はっきりと「もうこれ以上話せませんから」と伝えなければ
ならないし、逆に自分が相手に迷惑がられていても、タダなんだからもうちょっと
話してもいいやと、鈍くなってしまうかもしれません。

そういえば、スカイプの存在を教えてくれた若手起業家クンも言っていました。
「昼間、打ち合わせで集まっても、つい、だらだら雑談して過ごしてしまう
ことが増えちゃいました。夜、スカイプで詰めればいいや、とみんなが思って
しまうんです。スカイプは複数でも通話できるんで、会議代わりに使えて
便利なんですよ」
スカイプ、便利なようで、実は人間をダラダラ長電話に陥れる悪魔の道具に
なるんじゃないか?
いやいや、人生には無駄も必要なんですけどね。
私は今後スカイプ仲間を増やすのには、慎重であろうと決めました。
     

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