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Vol.06 どんな選手を愛するか
今日は私の愛する男の話題です。
といっても、それは野球の話。

イチローの最多安打記録に沸き、パリーグは日ハム対西武のプレーオフ接戦で
盛り上がり、ゴタゴタ続きで凋落が心配された野球への関心も、ひとまず息を
吹き返した感があります。

どの選手のファンであるかを聞けばその人の人となりが分かる、と言われます。
野球に限らずのことですが、スポーツ選手の職業人生は、私たち一般人の
それを凝縮しています。

短い期間に頂点を迎え、散る。
よき指導者と出会って才能を開花させる人もいれば、監督や所属チーム
上層部との不和が続いて、芽を伸ばしきれずに引退する人もいる。

プロ野球が人生の縮図だと言われるのは、そこに人生の希望と無常を
私たちファンが思い思いに見て取ることができるからなのでしょう。

さて私が応援しているのは、阪神の金本知憲外野手です。金本は今年36歳。
阪神では上から2番目のベテランです。

金本選手は今年8月1日、42年間破られることのなかった大記録を更新しました。
野球ファンならご存じの通り、連続フルイニング出場記録です。
分かりやすく言うと、701試合、どの試合もフル出場し続けたのです。
途中退場もせず、監督に代打、代走を送られることもなく、99年7月21日から
ずーっと、試合に出続けているのです。

金本選手は広島に入団当時、まったく期待されていない選手でした。
ドラフト4位。やせっぽちで、捻挫や骨折といったケガを繰り返していました。
四国で開いた春のオープン戦。初めて先発起用された時、
捻挫をしたので出られない、と監督に告げると、「海を泳いで帰れ!」と
突き放されました。

根が頑張り屋だったのでしょう。ウェイトトレーニングでケガをしにくい身体を
作り、レギュラーに定着しました。そしてある時、試合前に敵チームの監督が
自軍の監督とこんな話をしているのを、耳にします。

「とにかく休まず試合に出てくれる選手はありがたいなあ」

こう言ったのが当時中日の星野仙一監督。自軍の山本浩二監督とは親友です。
金本はこれを聞き、選手が休まないというのはそれほど監督にとってありがたい
ことなんか、と驚きます。そして、オレはそれを実践するぞと心に誓ったのです。

前回、森光子さんの舞台のことを書いたように、私が最も心を打たれ、
尊敬するのは「一流の技を継続している人」なのです。

一流の技を持つ人は、少なくありません。ただその技を発揮する場を
与えられ続ける人は、とても少ないのです。

人一倍の努力はもちろんですが、チャンスを得る人とは、何かしら気配りの
出来る人なのではないかと思います。

森光子さんが少年隊のヒガシこと東山紀之さんと親しくなった時の話は有名です。
紅白の審査員をした時、リハーサル中のヒガシに、「いつも見てますよ、
東山さん」と声をかけ、それが当時は名前で呼ばれることが少なかったヒガシを
感激させたのです。

別に、ヒガシに気配りしたって、86年当時すでに大女優だった森さんに
何がいいことがあるわけではありません。

ただ頑張っている若手に声をかけ、あなたの力量を見ているわよ、と
伝えることで、森さんはヒガシに慕われました。ひいてはジャニーズの
若手皆に慕われ、その話題がテレビをにぎやかすようになりました。

森さんとヒガシ、あるいはほかのジャニーズタレントは舞台で何度も
共演しています。森さんとジャニーズ。今やそれは、「見たい」、と客に思わせる
キャストとなったからです。

金本選手も、大変な気配りの人です。
アテネ五輪に派遣された若手2人には10万円のお餞別をポン。
ホームランや猛打賞の賞品、賞金はチームの裏方さんにプレゼントしています。
最近ではこんなことがありました。

今年6月、阪神の安藤投手が巨人の清原選手の手にデッドボールを当ててしまい、
清原選手は今季をほとんど棒に振る羽目になりました。

9月25日の巨人阪神戦。試合前の練習時、久しぶりに復帰した清原選手の所へ、
安藤投手が頭を下げに行きました。

おお、まさに番長の元に若手がわびを入れに行く構図……。
するとすかさず金本選手が寄ってきて、清原選手に向かって言いました。

「清原さん、許さんでいいですよ」

清原選手は大笑い。「気にすんな」と安藤投手に声をかけました。
乱暴な物言いとは裏腹に、その時、金本選手の手は安藤投手の背中に
添えられていたのです。

金本選手はプロ13年目で初めての打撃タイトル、打点王の獲得に向けて
猛ダッシュ中です。
すでにBクラスが確定した阪神のチームメイトは、口を揃えて言っています。
「金本さんに打点王を絶対に取ってもらいたい。なるべく金本さんの前に
ランナーを貯めて、金本さんの手で返してもらいたい。野手は全員、
その気持ちでやってます」

この人は周囲を支え、自分もこうやって周囲に支えられながら、野球人生を
有意義なものにしていくのだろうなあと、思うのです。
     

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