福祉の仕事 | 294job.com





  
Vol.01 信じる者は救われる?
初めまして、メールマガジンでコラムを執筆するフリーライターの長田美穂と申します。
よろしくお願いします。

さて私の仕事、ライター稼業は調査、取材、執筆と、パソコンに向かって座りっぱなしです。
連夜の締切から開放されてほっとしていたある日。
リクライニング椅子から、ふと立ち上がった瞬間のことでした。

ぐじゅっ。背骨が液状化したような違和感がありました。走る激痛。
その場にへなへなとへたり込んだワタクシ。
それから丸一ヶ月、なんと寝たきりで過ごすことになったのです。

ヨチヨチ歩けるようになったので病院へ行くと、
腰の椎間板ヘルニアだと診断されました。

いやあ、阪神タイガースのショート、藤本敦士選手が大学一年の時に入院し、
野球も断念したって言っていた、あれかあ。

なんて虎キチぶりを発揮している場合ではありません。

椎間板ヘルニアとは、脊髄の骨と骨の間の軟骨が、つぶれて、
背骨の外まで飛び出してしまう状態です。
治療法は、手術で軟骨を削るか、麻酔で神経をブロックする注射しかない、とのこと。

「どっちにしても完治はしません。治療したいなら、また来て下さい」。
医師には冷たく突き返されました。
そんなあ。腰の痛みで、椅子に1分と座れない状態なのです。
ちょっとだけ歩けるようになったものの、
座れないって、生活を営む上でとても不便なのに。
「そのうち慣れますよ」って、お医者さん、それでいいのか。

もう書く仕事はできなくなるのだろうか。
こう考えると、私は精神的窮地に立たされました。

別の病院を訪ねようか。いやもう一つの選択肢がありました。

親友から、医療機関ではないが凄腕の治療師の先生がいる、
と紹介されていたのです。
ものすごく努力されて治療の技術を身につけた方であること、
自分の母親や取引先が、私と同じような症状を治療してもらい、
いまや痛みから完全に解放されたという”実績”があるということ。

親友はじっくり説明してくれました。

手術も注射も私はイヤだ。民間療法も、得体がしれない。
でも親友の言うことなのだ。彼女は絶対に、悪いことは言わない。
一度だけ、凄腕の治療師先生とやらを訪ねてみるか。
それでダメだと分かったら、切るなり刺すなり、覚悟しようじゃないか。

治療の先生を訪ねてみました。

押したり、軽く叩いたり、整体のようなマッサージのような、不思議な手技でした。
何より治療が終わると、私の痛みはウソのように消失していたのが不思議でした。

なんで? 私が呆然としていると、先生は言いました。

「あなたはきっと私のことを、最初なのに信頼してくれていましたよね。
信頼してくれる患者さんは、なぜだか分からないけれど、治療が早く進むんです。
今日は、初めてなのに、私が予想していたよりずっと、治療がうまくいっちゃいましたよ」

実は似たような話を、以前、製菓会社のスポーツ用補助食品事業部の開発者から
聞いたことがあったのでした。

その開発者は、瞬発力を高めるアミノ酸とか、持久力を高める成分といった栄養成分を使って、
アスリート用の補助食品を開発しています。
ゴルフ、柔道、プロ野球とあらゆる一流選手に商品を提供しながら、
その選手とタッグを組んで、最適なトレーニング方法をアドバイスし、
かつ選手から得られたデータを新商品開発に活かすのです。

名前を聞くとびっくりするような超一流選手から、
彼は毎日のように相談を受けています。
今、筋肉に鈍い痛みが走っているけれどこういう時は何を飲んだらいいのか、
トレーニングはどうすればいいか。時には、メンタル面での相談にも乗ります。

「とにかく僕の言うことを信じて下さる方、この補助食品を使うと
パフォーマンスが上がるんだ、と信頼して飲んで下さる方は、
本当に、効果が出るんです。心と身体って、連関しているなあと、痛感しています」

彼はこう言ってました。そんなもんかなあ、とぼんやりこの時は聞き流しました。
でも治療の先生の話は、補助食品の開発者と同じことでした。

一歩間違えば、宗教じゃないか。
「信じる」というその一点に関して言えば、
その指摘はあながち外れていないかもしれません。

ただ、この補助食品の開発者も、治療の先生も、知識や技術を習得するために、
多大な努力と研鑽を惜しまなかった人なのです。
おそらくアスリートだって、最初から開発者の言うことを信頼したのではなく、
付き合ううちに、彼が自分でもボディビルを始めて国内大会で入賞するほどの
努力をした話など、仕事にかける情熱が生半可なものではないと知ってから、
心を開き始めたのでしょう。

私の場合は、手術怖さに治療院を訪ねました。
それでもやはり親友に、どんな先生なのか、どういう経歴の持ち主なのか、
あれやこれやと聞きましたから。

人は、簡単に人を信頼したりはしないものです。
ある意味寂しいことですが、溢れる情報から自分を守るためには、
疑ったり、批判的に物事を考える作業は不可欠です。

でもここぞと思う人に出会ったら、思い切って信頼してみること。
福祉の世界にこれから飛び立つ皆さんにも、
きっと、そのような機会が待ち受けているでしょう。

そして職業人としても、
思い切って他人から信頼してもらえる人間になりたいものですよね。
     

コラム目次へ